- 新NISAの非課税枠1,800万円は最短の5年で使い切るべきか教えてほしい
- 新NISAの非課税枠を最短5年で使い切るときのデメリットがあるのか知りたい
- 新NISAを利用して5年で1,800万円投資したときの運用成果が知りたい
新NISAの非課税枠1,800万円について、最短の5年で使い切るべきという主張を複数見かける。
最短で使い切るには月30万円(年間360万円)の資金が必要になり、余裕がない人にとっては現実的ではない。
長期間にわたって新NISAの非課税枠を使い切った場合でも十分な効果があるため、双方のメリット・デメリットを見て自分に合うほうを選ぼう。
本記事では、新NISAの非課税枠をどれくらいの期間で使い切るべきかについて、メリット・デメリットも踏まえて解説していく。
新NISAで毎年いくら投資すべきなのか判断できない人は、ぜひ参考にしてほしい。
最短5年で新NISAの非課税枠を使い切るメリット・デメリット

最短5年で新NISAの非課税枠1,800万円を使い切るメリット・デメリットが2つずつある。
メリット①:期待できる利益が大きい
少額でコツコツ積み立てるよりも最短で新NISAの非課税枠を使い切ったほうが、期待利益が大きい。
非課税枠を使い切る年数ごとに30年後の資産額をシミュレーションすると、最短で使い切る5年の場合が最も多くなる。
非課税枠を使い切る年数 | ||||
---|---|---|---|---|
5年(月30万円) | 10年(月15万円) | 20年(月7万5,000円) | 30年(月5万円) | |
30年後の資産額 | 約6,908万円 | 約6,180万円 | 約5,022万円 | 約4,161万円 |
出典:金融庁「つみたてシミュレーター」、カシオ計算機「複利計算(元利合計)」
メリット②:今後の株価が右肩上がりなら長期積立より儲かる
シミュレーション結果が示す通り、今後の株価が右肩上がりであれば、安いうちに投資するほうが長期積立より儲かる。
実際の株価はシミュレーションのように毎年一定の率で上がるわけではないが、直近30年の値動きを見れば右肩上がりであるのも事実だ。
例えば、1994年〜2024年11月27日までの米国株(S&P500)を見ると、株価は12倍以上になっている。
リーマンショックや新型コロナショックのような株価暴落はあるかもしれないが、長期的に見れば今が安値と判断して最短で使い切るメリットは大きいだろう。
デメリット①:長期積立と比べて暴落時のリスクも大きくなる
非課税枠を5年で使い切った後に株価が暴落すると、長期積立と比べて資産の減少額も大きくなる。
仮にリーマンショック級の暴落が発生すれば株価は約50%下がり、1,800万円投資していたら暴落時の評価額は約900万円になってしまう。
月5万円の積立なら、5年後に暴落が発生しても300万円が約150万円になるだけで済む。
暴落しても売らずに待ち続けられれば株価が上がる可能性はあるが、安値で狼狽売りする人は意外と多い。
暴落が怖い人は、新NISAの非課税枠を最短で使い切ることにこだわりすぎないほうがいいだろう。
デメリット②:月30万円の資金が必要
新NISAを5年で使い切るには月30万円(年間360万円)
の資金が必要になるため、収入や資産の多い人を除いてハードルが高い。
高収入の会社員・公務員や資産が2,000万円程度ある人を除いて、非課税枠を最短で使い切るのは現実的ではない。
長期間にわたって新NISAの非課税枠を使い切るメリット・デメリット

一方で、長期間にわたって新NISAの非課税枠を使い切るメリット・デメリットも2つずつある。
お金に余裕がない人は、最短で使い切るべきという意見に惑わされずに自分のペースで積立投資を始めたほうがいいだろう。
メリット①:資産が少ない人でも始められる
積立期間が長いほど毎月の投資金額は少なくなるため、資産が少ない人でも始めやすい。新NISAで買える投資信託は、ネット証券であれば月100円から投資できる。
新NISAには年間360万円の投資枠が定められているが、年間の投資金額がいくらであっても非課税枠1,800万円は変わらない。
お金に余裕がない人は無理をせず、少額から新NISAを始めてみよう。
メリット②:暴落時のリスクを抑えられる
積立金額が少ないうちの暴落なら、新NISAを短期で使い切る場合と比べてリスクを抑えられる。
株価が半分になった場合、1,000万円投資していれば500万円の評価損だが、100万円なら50万円の評価損で済む。
いつ暴落がくるのかは誰にもわからないので、少額から始めて様子を見るのも選択肢の一つだ。
デメリット①:株価上昇時の期待利益は小さい
長期間にわたって新NISAの非課税枠を使い切る場合、最短5年で使い切る場合と比べて株価上昇時の期待利益は小さい。
非課税枠を使い切る年数 | ||||
---|---|---|---|---|
5年(月30万円) | 10年(月15万円) | 20年(月7万5,000円) | 30年(月5万円) | |
30年後の資産額 | 約6,908万円 | 約6,180万円 | 約5,022万円 | 約4,161万円 |
出典:金融庁「つみたてシミュレーター」、カシオ計算機「複利計算(元利合計)」
長期的に見れば株価が右肩上がりであることを考えれば、積立金額によっては30年間で2,000万円以上の差が発生する可能性がある点は無視できない。
デメリット②:機会損失が大きくなる
十分な資産のある人が少額投資に徹すると、これまで通りに株価が上昇した場合は機会損失が大きくなる。
今後30年間の株価が右肩上がりにならないのであれば長期積立のほうがパフォーマンスはよい場合もあるが、その可能性は過去の値動きを見る限り高くはない。
お金があるのにリスクを抑えて少額投資から始めることは、過去の値動きを考慮すれば合理的な選択とはいえない。
【結論】新NISAは何年で使い切るべきか

新NISAを何年で使い切るべきかは、結局のところ人による。
今100万円しかない人が5年で使い切るのは現実的ではないし、暴落時に狼狽売りをするくらいなら少額投資のほうが損失を抑えられるだけマシだ。
ここでは5年で使い切るべき人と長期間かけたほうがいい人にわけて特徴を解説し、運用時のポイントを紹介する。
5年で使い切るべき人の特徴
新NISAの非課税枠を5年で使い切るべき人の特徴は、以下の通り。
- 万が一暴落しても株価が回復するまで待ち続けられる人
- 資産に余裕がある人
- 暴落時のリスクを理解したうえでリターンを重視したい人
端的にいえば、十分な資産がありリスク許容度が高い人は、5年で使い切るべきだ。
ただし2024年11月27日時点の株価は、新型コロナショック前と比べても1.5〜2倍程度に上昇している。
株式の売却を進めている著名な投資家もおり、高値警戒感は強い。リターンを追求する人は、暴落のリスクが比較的高いことを想定したうえで投資を始めよう。
長期間かけて使い切るべき人の特徴
一方で、新NISAの非課税枠を長期間かけて使い切るべき人の特徴は以下の通り。
- 暴落がどうしても不安な人
- 保有資産が少ない人
- リターンが減ったとしても暴落時のリスクをできる限り抑えたい人
資産が少ない人や暴落時のリスクが気になる人は、少額積立から始めたほうがいい。
月5万円の積立投資でも、年率5%で運用できれば30年後には約4,161万円になる。直近30年間の米国株の上昇率を見れば、年率5%は容易に達成できる水準だ。
マイホームの頭金や子供の教育費で切り崩すことがあったとしても、老後資金として1,000〜2,000万円前後は確保できるだろう。
新NISAで運用をするときのポイント
新NISAで運用をするときのポイントは、以下の3つ。
- 余剰資金の範囲内で投資をする
- 最低でも年1回は運用の見直しを行う
- 自分のリスク許容度に合う運用を心がける
新NISAは利益が非課税になる制度として「お得」「やるべき」といった煽り文句を見かけるが、もしものときの現金もある程度必要だ。
最低でも1か月分の生活費、できれば3〜6か月分の生活費は現金として確保しておきたい。
新NISAは収支の状況に応じて自由に積立金額を変更できるので、余裕が出るまでは少額から始めてもいいだろう。
長期投資を前提に株や投資信託を選んだとしても、年1回は運用状況の確認と見直しをしよう。投資開始時の想定が崩れている場合、運用商品の変更も必要だ。
新NISAの運用についてアドバイスしている専門家や投資家は多数存在するが、あなたのリスク許容度と同じとは限らない。
例えば、個人投資家に根強い人気があるeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、新型コロナショックで30%以上下落している。
30年運用する間に、このような暴落は何度か起こるだろう。下落率が30%で済まないときもあるし、株価の回復まで4〜5年以上かかることもある。
30%程度の下落で狼狽売りをするくらいなら、たとえリターンが少なくてもリスクを抑えた商品を選ぶべきだろう。
新NISAの非課税枠を5年で使い切るべきかどうかはプロに相談しよう

新NISAの非課税枠を5年で使い切るべきかどうかは、個々の状況やリスク許容度に応じて異なる。
ここでは、専門家に相談するメリットや資産運用の主な相談先を紹介する。
資産運用を専門家に相談するメリット
資産運用を専門家に相談するメリットは以下の3つ。
- 運用方針が決められない際に適切なアドバイスが受けられる
- 株価暴落時の狼狽売りをある程度防止できる
- 特定の金融機関に属さない専門家なら中立的な提案も期待できる
新NISAでは、1,000本以上の投資信託や日本株・米国株など対象銘柄が極めて幅広い。この中から運用商品を選ぶのは、投資経験者を除いて容易ではない。
購入銘柄や運用方針を自分で決められない人にとっては、専門家のアドバイスは助かるだろう。
投資経験豊富な人を除いて、株価が暴落すると「まだ下がるのでは」といった不安が強まる傾向がある。
運用当初から投資先に対して不安があると、待てば結果的に価格が上がった銘柄も狼狽売りするかもしれない。
専門家に相談したうえで運用すれば、狼狽売りによる後悔もある程度防げるだろう。
証券会社など特定の金融機関に所属しない専門家なら、会社の利益ではなく顧客の利益を優先した中立的な商品提案も期待できる。
資産運用の主な相談先
資産運用の主な相談先は、以下の通り。特定の金融機関に所属しない専門家から相談を受けたいなら、FPまたはIFAが適している。
- 証券会社の担当者
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
FPは個別銘柄の提案やアドバイスができないが、一般的な資産運用の相談はできる。新NISAについても、どのように活用すべきかなどの相談は可能だ。
IFAなら、個別銘柄の提案やアドバイスが受けられる。営業成績による提案商品の制約がないので、証券会社と比べて顧客目線に立った提案が期待できるだろう。
新NISAを5年で使い切るべきか迷ったら専門家に相談してみよう

本記事では、新NISAをどれくらいで使い切るべきかメリット・デメリットを含めて解説した。
最短の5年で使い切ったほうが期待利益は大きいが、新NISAの非課税枠を5年で使い切るには毎月30万円(年間360万円)の投資が必要になる。
新NISAの非課税枠は1,800万円と決まっており、年間の投資額が少なくても枠を無駄にすることはない。
月5万円で30年間積み立てた場合でも、運用利回り年率5%なら約4,161万円になる。最短で使い切らなくても効果は十分あるので、余剰資金の範囲内で無理なく運用しよう。
新NISAは対象銘柄が幅広く、どの商品を選んだらいいのか迷う人も多いだろう。新NISAで運用商品が決まらない人は、プロへ相談してみよう。
IFAは特定の金融機関に所属していない専門家であるため、中立的なアドバイスが期待できる。
自分に合う専門家を見つけられない人は、IFA検索サービスなどを活用してみよう。